調理場という戦場

調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 (幻冬舎文庫)

 著者の斉須(さいす)さんの、調理人としての歴史を振り返った自伝。言葉使いが、語りかけてくれるような書き方で、良い。

 この本を読むまで、料理人の仕事は容易には想像できなかった。自分の仕事(SE)とは、あまりに違う事をやっているからと。

 でも、仕事人として本質は変わらない事をしていると、読後に考えた。いや顧客との距離と、求められるOutput(料理)を作る時間が少ない事を考えると、より厳しい状況下で仕事をしているとも言える。

 サブタイトルに仕事論とあり、随所に斉須さんの考えが出ている。特に、レストランにおける料理人のチーム(組織)について、語られていることが多いと感じ、それがおもしろい。フランスで働いた店すべてが、それぞれに異なる組織体系で、一つ一つの状況をを鋭く描いている。望んでも、こんなに違う所には行かないのでは?と思うぐらい、様々な情景が浮かぶ。その中で生き延びるため、日々「生きる力」を満たして生活していたのが感じられた。
 
 中にちりばめられた言葉に、勇気付けられた気がする。また、激を飛ばされた気がする。仕事やら日常やらで、ちょっと迷いがあるとき、前向きでない時に、読むと良いヒントが得られる気がする本でした。

 しっかり仕事をして、三田の「コート・ドール」に食事に行きたい。本でわからなかった、味覚・盛り付け・空気を、今度は体感したい。