プラハのシュタイナー学校(感想)

プラハのシュタイナー学校 [ 増田幸弘 ]

 この本の出会いは、2008年夏にさかのぼる。当時の日刊県民福井に連載されていた、同名の連載記事を目にしたのが最初。新聞を毎日読む習慣がないので、20回目あたりを発見して、最終回まで。毎日の新聞の楽しみは、この記事(笑)。それらがまとまり、本になり刊行されました。

 本の内容は、著者の増田さんが奥さんと子供2人の四人家族でプラハに移住し、子供2人が公立シュタイナー学校編入する話。編入のいきさつから卒業までの約3年を、お父さんである増田さんが書かれています。本で読むと連載記事だけの情報とは違い、ヒラクとツドイ(お子さん二人の、現地でのあだ名?)を取り巻く友人・環境や、3年という時間の流れを良くつかむ事が出来ておもしろい。

 改めて読んで良かったなぁと思った一冊。子どもとの時間をちょっと考え直す、子どもとの時間というものを知るのにお勧めな一冊です。

おおざっぱな内容

 前半の面白いところは、シュタイナー学校紹介と、増田家の出国までのいきさつ。

 学校の教育を一言で語ってしまうのではなく、誰もが気になるであろう各種イベントを細かく紹介する事で、(当時のプラハの公立)シュタイナー学校とはどんなところかが良く理解できます。ロウソクを立てて詩の朗読から始まる授業とか、おもわず「なぜ?」が浮かんでくるものが多いのです。

 また、そこに入学する事を決めた増田家の事情も、興味深い。小学校から親と同じ学校に通い、そこでの・・・という、将来の自分の子供にもつながる境遇が特に興味を引いた。現在の日本の小学校・中学校というのは、卒業以来、強い関わりも無く無知な状態。いまの母校はどうなっているんだろうか?僕は、小学校は小学校で、中学校は中学校で、いろいろ楽しめた方かな。

 後半は、海外生活者が誰もがぶつかる(と思われる?)言葉の壁を越えて、シュタイナー学校の次へと進む子供たちの成長が語られる。チェコ語は、特に難しいらしく苦労したようです。でも、それを乗り越えた子供たちの未来の話題は、頼もしさを感じる内容。

 どこで暮らしてても、勉強できようが・できまいが、その人なりの課題は必ずあると考えます。シュタイナー学校の先生たちは、外国人(=増田家)が直面しているものを「問題」とはせず、常に「課題」(=取り組んで、解決できるもの)として捉えているように見えました。その明確な課題設定を、子供たちが親と一緒に乗り越えていったんだなぁと。それを乗り越えた彼らの将来が楽しみなエンディングです。

感想

 全編通して、親として日々、子供たちの環境を深く考えて続けた増田さんに尊敬の念を持ちつつ、自分の知ってる日本(福井の公立?)の教育との違いを知る大事な時間を持てました。日本が悪い、プラハが良いという構図は、特になく。ただ気づいたのは、しっかりとした考えを持って行動をしている人(この本であれば子供の教育?かな)の周りには、良い人が集まってくれるんだなぁという事。プラハシュタイナー学校の先生や、近所の人々も、めぐり合うべくして増田家が出会った方ばかり。自らが動く事の大事さを改めて感じた一冊でした。


 著者の増田さんとブログをきっかけに、メールをやり取りさせてもらうようになりました。彼の住む国や仕事など、興味の対象は尽きません。これを一つの良いきっかけとして交流させてもらおうと思っています。