相克の森

相剋の森

 熊谷達也の森シリーズ第二弾。先日読んだ、漂泊の牙はマタギの話が少し顔を出した程度だったが、今作は、まさに続編にあたる作品。舞台を現代に移し、現代のマタギを追いかける女性ライター美佐子の視点を中心に展開される物語。

 「山は半分殺(の)してちょうどいい」というキーワード。これを探る為に、自然保護・熊狩りにと、美佐子が関わっていく。主人公の心理描写は邂逅の森に近いが、今回は女性が中心。のめりこんだとまではいかないものの、結構納得できる内容で面白い。

 上記のキーワードよりも、僕自身がヒットしたのは山岸教授の「共死」の話。共生を謳う前に、いかにして共に死ぬか「共死」の思想に、まず向き合わないといけないのではないか?という話。共死を考えることで、生き物と生き物が一緒に生きている、どろどろした感覚をもった議論にすべきでは?というもの。

 以前、自分が鶏を絞めた事があるのだが、この時、頭で考えていた疑問符に回答をもらえた気がした。スーパーにならんでいる鶏肉と、自分が絞めた肉。違和感を感じるのだが、何が違うのか。食材と(狩りとまではいわなくても)自分の手間隙かけて作った肉。生き物の(感覚上の)存在の有無が違いだったのだと今は思う。

 もう一つ。小山田先生の「狩猟をしてもびくともしないだけの豊かな自然」。これもヒット。偏りがない、考え方だと思った。


 総合的に平たく言えば、漂泊の牙に近いストーリー展開で、現代における自然の考え方を、リアルな描写により教わった本。読み終わり、自然が身近にある環境で生活している事を改めて意識し、ちょっと外に出てみたくなりました。

 ツキノワグマが居るかもしれない、近くの山も(安全対策をした上で)歩いてみたい。山が自然が、また楽しく見えてきました。